『エロマンガ先生』にみえる真実。
オススメ度★★★★☆(4.5)
青豆です。伏見つかさ先生の新シリーズ『エロマンガ先生』を読みました。おもしろすぎて睡眠時間を削るほど没頭してしまい、ちょっと辛いです。やはりベストセラー作家はレベルが違うなぁと実感。いやほんとに面白いです。
基本的に、引きこもりの美少女(義妹)とひとつ屋根の下同居する、いわゆる「楽園モノ」に分類されるこの作品なのですが、どんなにヒロイン兼義妹である紗霧と主人公の正宗が仲良くなっても、「俺たちは兄妹だ」と言い張り一線をひく、というのが肝要なんじゃないかと。この作品でいちばんの謎であり、伏見先生が用意したある意味明瞭な伏線なわけなんですけれども、一巻だけでは情報が足りないせいもあり、どれだけ読み込んで考察しても、手のひらで踊らされているような感覚が拭えません。この「読ませる技術」は『僕は友達が少ない』の平坂読先生あたりと比較しても面白いかも。
ヒロインの紗霧ちゃんがとても可愛いです。お尻を突き出した格好で、鏡に映ったひもパン姿をじっくりセルフ観察し、イラストを描く。しかも! しかもですよ! 使用済みのひもパンツを兄に洗濯させるというご褒美プレイもおこなっていたのです!あと紗霧ちゃんはオナニーひどいと思います。生理はさすがにまだですね。いや作中にきたのかもしれない。このあたりは読み飛ばしてもらって結構です(文末)。
「ライトノベルはイラストがすべて」だなんて、手垢のつきまくった感想を述べる気はないのですが、やはりラノベにとってイラストは大事でしょう。ページを捲り、挿絵を眺める楽しさは一般小説では得られない。自身のイメージが更に強化され、ヒロインの表情が文章からありありと想像することができます。ふふふ(帰ってこい)。あと、キャラクターの声を勝手にキャスティングして脳内再生させやすくなる、という効果もありますね。えぇ、副産物です。個人的には紗霧の声優は洲崎綾さんとかどうですかね!(聞いてない)
そのへんの考察や言及は下記のサイトでいろいろ書かれてあります。すいません、丸投げしました。
ライトノベルのイラストは売上アップの特効薬ではない - WINDBIRD
主人公である和泉正宗は『俺妹』の京介そのものなんですけども、相変わらずの遠回りな直球・暴走は笑えます。最近ではなよっとしたような(安易な表現ですが)どこか陰のある内省的な主人公が多くなりつつあるラノベ群ですが、やはり主人公は積極的にアクションを起こし、活躍しないと熱くないよなぁとしみじみ思いました。終盤は感動的です。あ、話は逸れますが、Twitterでフォロワーの多い人っていうのは概してアクション・ムーブを頻繁におこなっている、というのもあながち的はずれな推察ではないでしょう。
腫れ物を触るように接することで辛うじて保持されていた楽園、自分が他者に全霊をもって愛されるはずがないと思い込む主人公やヒロインの臆病さに、現実にある「真実」を見出すのはぼくだけではないはず。
もう愛し合っているはずなのに、愛し合ってはいないと遠ざける寂しい二人だけの秩序のある空間。自分には愛を受け入れ入れる資格はないと、勝手に決め付ける行為は、なるほど、確かに彼は紗霧にとって「嘘つき」で、自分の想いから逃げる「裏切り者」だ。だからこそ安心を得られているのかもしれないけれど。
楽園はいつ壊されるのか。物語が本当の意味で動き出すのを心待ちにしながら、次巻も続けて読んでいきます。
一応書いておくと、不満点があるとするなら、やっぱり『俺妹』の二番煎じ感があるんですよね。安定した面白い作品ではあるんですが、ネタのテンションだとか漫才だとか、前シリーズでお腹いっぱいなところもあるので、もうちょっと実験的な作品を書いてもらいたかった、ぐらいですね。
それでは。