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『エイルン・ラストコード~架空世界より戦場へ~』感想

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ (MF文庫J)

 

MF文庫より新鋭作家・東龍之介先生による『エイルン・ラストコード』、読了しました。

 

PLOT

これは嘘を真実に、空想を現実に変える、いや変えていった人間たちの魂の物語である。

ーー西暦1999年9月9日、謎の巨大生物が世界108箇所にて同時発生、地球上の生態系すべてを喰らい始める。国際連合は、この正体不明の生物を人類初の敵性生物=天敵と認定。以降、【悪意(マリス)】と呼称する。

マリス発生直後、散発的に勃発する襲撃を、人類が培ってきた文明の粋・英知によって撃退し続け、15年ものあいだ、優勢を保っていたが、2015年、異常な進化を遂げたマリス、【バース7】と名付けられた最初のクイーン種7体が世界各地に出現。IME=無差別物質消去という、その圧倒的な能力を前に無力化され、瞬く間に戦況は覆された。

 

半世紀あまりで推定12億7000万以上もの生命が奪われ、劣勢に置かれる人類であったが、やがて転機が訪れる。ーー武器の獲得と、生贄の誕生。

対マリスの切り札、規格名称【ネイバー】と、優先被虐対象者【ヘキサ】を、人類は手にしたのである。

 

そして人類と悪意との、生存と尊厳を賭した戦争は、半世紀ーー西暦2070年を迎えた現在も続いていた……。

 

Review

公式サイト気合入ってんなぁ……と。


エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ オフィシャルサイト

 

わりと粗製濫造アニメにより評価を貶め続けていると思われるMF文庫Jからの意欲作、『エイルン・ラストコード』、非常に面白かったです。イラストレーターを複数起用し、挿絵に漫画を使用したり、なかなか凝った演出が憎い。設定等はロボットものの宿命たるや既視感ありまくりで、『マヴラブ』だったり『ファフナー』だったり、そのあたりはまぁそれはそれということで。あくまで表層の表層的な部分に過ぎません。つまりどうでもいい。マップが変わるダンジョンと思えば気にならん(それはどうなのか)。

作品の根底にあるイメージ、「やりたいこと」が重要で、恐らくこの作品は、『イリヤの空 UFOの夏』へのオマージュなのかな、と。なんだそりゃ、今更だろ!あの夏はもう終わったんだ……過去の亡霊を呼び覚ますような呪文を唱えるのはやめてくれ……。

あるいは「『13日の金曜日』に『仮面ライダー』を登場させる」といった小中学生の妄想の延長線上にあるものに過ぎないのかもしれません。

 

ストーリーもかなりシンプルで、無垢でかわいい女の子に【自戒プログラム】といった奴隷化を促す設定や、他者の命を担わせ虐待するかつて仲間たち、それらを効果的に用いて完璧な被害者を作り上げることで胸糞悪い環境を生み出し、「世界」を前にして、人間は如何に矮小で、更にその世界が悪意として眼前に立ち塞がるとき、人間の尊厳や人生などいとも容易く捻じ曲げられる、それをただ傍観するしかない無力さを、俺TUEEEな主人公を働かせることによって見るも無残に解決していくという力技を惜しげもなく見せてくれます。これぞデウス・エクス・マキナ、最高の茶番劇だぜおい、泣けよ、泣くのだ、泣かねば死だ。わしゃあもう何も言いたくない。

 


『エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~』シリーズ始動CM_B - YouTube